『残穢 住んではいけない部屋』:ミステリーとしては面白いが、ホラーとしての出来はイマイチ。。

残穢

「残穢 住んではいけない部屋」を観ました。

評価:★★☆

第26回山本周五郎賞を受賞した小野不由美のドキュメンタリー・タッチの同名ホラー小説を、「白ゆき姫殺人事件」の中村義洋監督が映画化した作品。中村監督は初期の頃はホラーを作っていたみたいですが、彼が映画ファンに認知されたヒット作「アヒルと鴨とコインロッカー」以降の長編作品では初で、僕も初めて中村監督のホラー作品を鑑賞させてもらいました。原作小説がドキュメンタリー・タッチということもあってか、ホラーとしての物語性を重視しているというよりは、ホラーであることの奇怪な事件を探索していくという、ミステリータッチな色合いが強い作品に仕上がっているという印象の作品になっています。

本作の始まりは、竹内結子演じるホラー小説家の元に届けられた1つの体験談から始まる。彼女は読者の投稿された実体験を元にして短編小説を書いているのだが、小説のリサーチのために、ある読者の奇怪なマンションでの物音の要因を調査し始めていく。そして、それはそのマンションが建てられる以前から、その土地に脈々と培われてきた「穢れ(けがれ)」によるものだということが分かってくる、、という展開になっていきます。この展開は予告編でも提示されており、概ね、その穢れの原因を探索していく過程というのが描かれていくのですが、これがミステリーとしては結構優秀でのめり込んでしまう。物語の構成が面白いというよりは、竹内結子のモノローグによって、物語1つ1つがうまく劇として展開していく様が面白いのだと思います。よく面白いエンタメ小説などは、文字や言葉1つ1つを味わうというよりは、先へ先へ読み進めたいという思いが先走ってしまうのですが、この映画の面白さはそれとよく似ています。

作品のテーマになっている「穢れ」というものに対し、人は少なからずも”恐れ”を抱くものだと思います。誰も人が自殺したり、殺されたりする場所には住みたがらないし、過去に大きな事故や戦闘、虐殺などがあって、多くの人命が失われた場所で宿泊したいとも思わないもの。それは苦しみや痛み、恨みみたいなものが怨念となって、その場に宿ると信じられてきたし、それを鎮めるために社や仏閣を立てて、その土地の魂を浄化しようとするのは、古くからの習わしとしてやってきている。無論、こうした行為は科学的ではないのかもしれないけど、そうした過去に対する怨念に囚われてしまうのも、人の性(さが)というものなのでしょうか。

こうした面白い展開を魅せてくれる本作ですが、ホラー映画としては怖さが少々足りないのが残念なところ。僕自身、ドキッとびっくりさせる系のホラーは嫌いので、その意味では本作はいいのですが、ミステリーだとしても物語的に最後の幕引きが難しいのも事実。そこで最後の最後でホラー映画っぽい展開を盛り込んでいるのですが、この無理くりな展開が作品としては少し安っぽくなってしまったようにも思います。前半の勢いを、うまくまとめることができるオチがうまく作れていれば、かなり高評価できる作品になっただけに残念なところです。

次回レビュー予定は、「クリード チャンプを継ぐ男」です。

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